フランス音楽②「シャンソン」

カフェや読書のBGMに聴きたい、シャンソンの名曲や定番曲をご紹介します。

休日の昼下がり、ワインとチーズで自宅ビストロ気分になれます。

音楽って最高ですね!

(2024年8月12日 松原ひさし選)

ざっくりシャンソンとは

シャンソンの女王エディット・ピアフ
シャンソンの女王エディット・ピアフ

シャンソン(chansson)はフランス語で「歌」そのものを指し、起源は中世の宮廷で活躍した吟遊詩人(トルバドゥールやトルヴェール)に遡ります。

狭義の音楽ジャンル的には、エディット・ピアフら百花繚乱の1940〜60年代の大衆流行曲をさすことが多く、詩の朗読に抑揚をつけた歌い方が特徴的です。また、ジャズのスタンダードとしても親しまれています。

なお、60年代の以降のロックの影響を受けた音楽は「フレンチポップ」と区別されます。詳しくは、こちらでご紹介しています。

ちなみに、フランス語で曲のことはun morceau(アン・モルソーと読む、かけらの意味)、ヒット曲はun tube(アン・テュブ)、音楽はla musique(ラ・ミュジック)、歌詞をles paroles(レ・パロール)といいます。

エディット・ピアフ『薔薇色の人生』

Édith Piaf / La Vie en Rose 1946年

シャンソンの女王の代表曲。「彼に抱きしめられ ささやかれたら 私の人生はバラ色」と歌っています。場末のパリ生まれで波瀾万丈な人生を送り、恋の切なさと喜びを歌いました。また、イブ・モンタンやシャルル・アズナブールら若き才能を見出しています。

イヴ・モンタン『枯葉』

Yves Montand / Les Feuilles mortes 1946

エディット・ピアフに見出されたイヴ・モンタンが新人の頃に歌った代表曲で、ジュリエット・グレコが歌い人気がでました。「枯れ葉がかき集められる 思い出も後悔も一緒に」と、恋人との別れを歌っています。フランク・シナトラ、ナット・キング・コールやマイルス・デイビスらのカバーも有名で、ジャズの演奏も多いスタンダードナンバーです。

シャルル・トレネ『ラ・メール』

Charles Trenet / La Mer 1946

穏やかで開放感のある大ヒット曲。「海が踊っている 明るい湾に沿って」と、車窓から眺める地中海を讃えています。多くのカバーや映画などで使用され、特に映画『ファインディング・ニモ』 のED曲『ビヨンド・ザ・シー』(Beyond The Sea)の原曲として知られています。Je chante. も有名。

エディット・ピアフ『愛の讃歌』

Édith Piaf / Hymne à l’amour  1950

世界中で愛されているシャンソンの代表曲の一つ。「空落ち地が裂けても気にしない」「あなたの愛があれば」と、飛行機事故で亡くした恋人へ捧げる歌とされています。数多く演奏されていて、2024 年パリ五輪開幕式でのセリーヌ・ディオンの圧巻のパフォーマンスも記憶に新しいです。日本では越路吹雪や宇多田ヒカルの日本語カバーが特に有名です。

ジュリエット・グレコ 『パリの空の下』

Juliette Gréco / Sous le ciel de Paris 1951年

サルトルらサンジェルマン・デ・プレの文化人に愛され、ミューズ(女神)と呼ばれた歌姫の代表曲の一つ。パリの様々な風景を歌っていて、ノートルダム寺院やサン・ルイ島などが出てきます。黒髪に黒ずくめの衣装と、『枯葉』や『ラ・ジャヴァネーズ』なども有名です。

エディット・ピアフ『パリの空の下』

Édith Piaf / Sous le ciel de Paris 1954年

映画「パリの空の下セーヌは流れる』(Sous le ciel de Paris, 1951年)でジャン・ブルトニエールが歌いました。その後、イヴ・モンタン、シャルル・アズナブール、ミレイユ・マチューらがカバーしています。

イヴ・モンタン『さくらんぼの実る頃

Yves Montand / Le Temps des cerises 1955年

さくらんぼの季節になると思い出す失恋の曲です。日本ではジブリ映画『紅の豚』のジーナ(加藤登紀子)による歌がおなじみ。様々な歌手が歌い親しみやすいメロディーですが、実は19世紀の「血の週間」犠牲者を悼む曲として想起されています(パリ・コミューン革命については、大佛次郎の小説『パリ燃ゆ』に詳しいです)。

ジャック・ブレル『行かないで』 

Jacques Brel / Ne me quitte pas 1959年

シャンソンの三大巨匠とも評されるベルギー人歌手の代表曲。暗めの曲調で、去りゆく恋人を言葉の限りを尽くして引き留めようとする男心を歌っています。様々な言語でもカバーされて、英語版のIf You Go Awayはポップスのスタンダードとされ、バーブラ・ストライザンドやマドンナも歌っています。

ダリダ 『ラストダンスは私に』

Dalida / Garde-moi la dernière danse 1961年

二枚目俳優アラン・ドロンとのデュエット『あまい囁き』など数々のヒット曲を持つ歌手の代表曲。元はアメリカのコーラスグループ「ドリフターズ」最大のヒット曲(Save the last dance for me, 1960)です。踊るのが好きな彼女とダンスパーティにいった松葉杖の主人公が「踊ってきていいよ」「だけど最後は家まで送ってね」という歌詞で、日本では越路吹雪の代表曲の一つとして知られています。

サルバトーレ・アダモ『サン・トワ・マミー』

Salvatore Adamo / Sans toi ma mie 1962年

『雪が降る』などのヒット連発で知られるベルギー歌手の出世作。「愛しい人よ 君がいないと 日々がとても重苦しくなってしまう」と恋の終わりを切なく嘆いています。日本では、越路吹雪やRCサクセッションのカバーが有名です。

ジョルジュ・ブラッサンス『仲間を先に(パリジャン気質)

Georges Brassens / Les copains d’abord 1964年

左岸派シャンソン界の巨匠の代表曲。同名タイトルの映画のために作られました。ギター片手にセーヌ川の船乗りの友情について歌っていて、パリ住民の気質に例えられます。パリ市の紋章の標語「たゆたえども沈まず」(Fluctuat Nec Mergitur)が歌詞に出てくるため、この副題がついたのでしょう。

シャルル・アズナヴール『ラ・ボエーム』

Charles Aznavour / La bohême 1966年

世界的にも有名な歌手の代表曲。自由気ままに生きる芸術家(ボヘミアン)だった青春の想い出を、ドラマティックに歌っています。フィギュアスケートのネイサン・チェンのSP曲として使用されました。アルメニア系のルーツでエディット・ピアフに見出され、エルヴィス・コステロ『シー』の原曲も知られています。アニメ『機動戦士ガンダム』の主要キャラクターの名前の由来にもなっています。

参照サイト

朝倉ノニーの<歌物語>

シャンソニアネット

【分野別音楽史】#07-2 ヨーロッパ大衆歌謡②シャンソン(フランス)

関連映画

エディット・ピアフ~愛の讃歌 2007年

La Môme

『薔薇色の人生』や『愛の讃歌』で知られる、シャンソンの女王エディット・ピアフの伝記映画。マリオン・コティヤール主演で、アカデミー賞を受賞しています。タイトル副題は代表作に由来しています。

『ダリダ~あまい囁き~』 2016年

Dalida

『あまい囁き』や『ラストダンスは私に』のヒット曲で知られるフランスの国民的人気歌手ダリダの波瀾万丈な人生を綴った伝記映画。タイトル副題は代表作に由来しています。

関連プレイリスト

シャンソン

まだまだいい曲あります!もっと知りたい方やもっと聴きたい方はこちらでお楽しみ下さい。

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