フレンチポップ:CMでおなじみフランスの有名曲13選

2024年パリ・オリンピック開会式で、エッフェル塔に登場したセリーヌ・ディオンのパフォーマンスは鳥肌ものでした。歌っていたのはシャンソンの名曲です。

そこで、 高校大学でフランス語を専攻していた筆者が、芸術の国フランスの音楽をジャンルごとにご紹介していきます。

フランス音楽①「60年代以降のフレンチポップ」

パリのカフェ
パリのカフェ

1960年代半ば〜1970年代半ばのフランスでは、歌手セルジュ・ゲンズブールを中心に「イエイエ(yé-yé)」という音楽スタイルと「フレンチ・ロリータ」が流行りました。日本では「フレンチ・ポップ」と呼び、前時代の「シャンソン」と区別しています。日本では90年代のピチカート・ファイヴなど「渋谷系サウンド」にも影響を与えました。

てことで、日本のテレビ番組やCMなどで聞いたことがある、フレンチ・ポップのアーティストと代表曲を発売年順にご紹介していきます。英語とは違うフランス語の響きを、ぜひご堪能下さい。ちょっとおしゃれ気分にひたれるかも?

音楽って最高ですね!

(2024年7月29日 松原ひさし選)

ざっくりフレンチ・ロリータとは

フレンチ・ロリータの先駆ブリジット・バルドー
BBの愛称で人気を博したブリジット・バルドー

1960年代にフランスで活躍した若手歌手・女優のことで、日本で言うところの「アイドル」の原型です。ロリータとは「魅惑的な少女」を指し、小悪魔的なルックスで人気を博した俳優ブリジット・バルドーのほか、ジェーン・バーキン、フランソワーズ・アルディ、フランス・ギャルらが有名です。

ビートルズなどのロックンロールに影響を受けた「イエイエ」を軽快に甘ったるく歌いつつも、アンニュイさや自立性も忘れないのがフランスっぽいです。

ちなみに「アイドル」という言葉も、シルヴィ・バルタンなどが出演した映画『アイドルを探せ』(1964年)に由来しています。アイドルとは本来は「偶像」と言う意味で、転じて「憧れや崇拝の対象」となります。

なお、シャンソンの名曲や定番曲はこちらでご紹介していますので、あわせてご覧ください。

1960年代以降のフレンチポップ(発表年順)

シルヴィ・バルタン『アイドルを探せ』

Sylvie Vartan – La plus belle pour aller danser 1964年

シャンソン歌手シャルル・アズナブール作詞。原題を訳すと「踊りに行くなら私が誰より一番キレい」です。同名映画(Cherchez l’idole)で歌ったキャッチーな曲で、世界を魅了。『あなたのとりこ』(Irrésistiblement, 1968年)など数々のヒットを飛ばし、フレンチポップの女王となりました。日本では、デジカメのCMで使用され、中尾ミエがカバーするなど超有名曲です。

フランスギャル『夢見るシャンソン人形』

France Gall – Poupée de cire, poupée de son 1965年

セルジュ・ゲンズブールが作詞作曲。早いテンポのロック調が斬新で、ユーロビジョンコンテストで優勝しました。原題を訳すと「蝋人形、おがくず人形」。実は、お人形のようなフレンチ・ロリータの美少女にアイドルそのものを揶揄する歌詞を歌わせていて、エッジが効いています。自動車「MRワゴン」や飲料「烏龍茶」のCMなど多く使用されたり、中尾ミエらにカバーされています。

クロード・フランソワ『コム・ダビテュード / いつものように』

Claude François – Comme d’habitude 1967 年

フランク・シナトラの『マイ・ウェイ』(My Way, 1969年)の 原曲として知られています。エルヴィス・プレスリーやシド・ヴィシャスなど多くの歌手にカバーされた、20世紀を代表する曲です。原題の訳は「相変わらず」で、カップルの倦怠期を歌っています。シナトラ版は成功者が人生を振り返る内容で、比較も面白いですね。

『恋はみずいろ 』ヴィッキー・レアンドロス

L’amour est bleu – Vicky Leandros 1967年

ギリシア出身のアイドル歌手が、欧州歌合戦「ユーロビジョン・ソング・コンテスト(Eurovision Song Contest)」で入賞した曲。恋に揺れる乙女心を歌っています。翌年には作曲家ポール・モリアによるインストゥルメンタル・バージョンが爆発的にヒットして、今なおイージーリスニングやBGMの定番となっています。

フランソワーズ・アルディ『さよならを教えて』

Françoise Hardy – Comment te dire adieu  1968年

アメリカの原曲にセルジュ・ゲンズブールがフランス語の歌詞をつけて大ヒット。原題の訳は「サヨナラをどう告げればいいの」で、別れを切り出す女心を歌っています。都会的で洗練されたファッションリーダー として人気を博し、『男の子女の子』(Tous les garcons et les filles, 1962年)も代表曲です。日本では戸川純、カヒミ・カリィや竹内まりやなどにカバーされたり、飲料「クラフトボス」のCMで使われています。 また、ユーミン(荒井由実のちの松任谷由実)がこの曲にインスパイアされて、 名曲『まちぶせ』(三木聖子、石川ひとみ)を書いたと言われています。

セルジュ・ゲンズブール & ブリジット・バルドー『ボニー・アンド・クライド』 

Serge Gainsbourg et Brigitte Bardot – Bonnie and Clyde 1968年

アメリカで実在した銀行強盗カップルを題材にしたヒット曲。PVにはアメリカンニューシネマの傑作映画『俺たちに明日はない』(1967年)の影響が見られます。ゲンズブールは酒とタバコと女と音楽を愛した自称「醜男」で、ブリジット・バルドーやジェーン・バーキンらとの恋愛遍歴も知られています。

ジョー・ダッサン『オー・シャンゼリゼ』

Joe Dassin – Les Champs-Élysées 1968年

首都パリの「シャンゼリゼ大通り」での出会いを歌う軽快な曲。日本では飲料「オランジーナ」のCMなどで使用されています。セーヌ川右岸のパリ8区にあって、凱旋門のあるシャルル・ド・ゴール広場から東のコンコルド広場まで全長約2キロ、幅70m。有名ブランド店やレストランなどが並ぶ観光スポットになっています。

ダニエル・ビダル『オー・シャンゼリゼ』

Danièle Vidal – Les Champs-Élysées 1969年

こちらのカバーバージョンが日本で流行りました。自動車「ジェミニ」のCMやサッカー応援歌で使用されたり、越路吹雪や由紀さおりなどが日本語でカバーするなど、日本で有名なフランス曲の1つです。

ミシェル・ポルナレフ 『シェリーに口づけ』

Michel Polnareff – Tout, tout pour ma chérie 1969年

印象的なフレーズと軽快なテンポの、フレンチポップの代表曲。原題の訳は「僕の全てを愛しい人に」で、一目惚れした気持ちを歌っています。日本ではサッカー応援歌やTVドラマ「ウォーターボーイズ」挿入歌や情報番組OP曲、自動車「ゼスト」CM曲として有名です。『ノンノン人形』(La poupée qui fait non, 1969年)などヒット曲を持つフランスの国民的スターで、もじゃもじゃヘアに白いサングラスが代名詞。漫画ジョジョ登場人物の元ネタでもあります。

ダリダとアラン・ドロン『あまい囁き』

Dalida, Alain Delon – Paroles, paroles 1973年

ミス・エジプト歌手と、映画『太陽がいっぱい』主演の二枚目スターの美男美女デュエットが、日本を含め世界中で大ヒットした曲。女性が歌唱し、男性がセリフのスタイルです。

ピエール・バシュレ『エマニュエル夫人』

Pierre Bachelet – Theme from ‘Emmanuelle’ 1974年

当時としてはセンセーショナルで、社会現象にもなった官能映画の主題歌として知られています。男性のけだるい歌声が、甘美でアンニュイな作品の雰囲気を引き立てています。

シャルル・アズナヴール 『忘れじのおもかげ』

Charles Aznavour – Tous les visages de l’amour 1974年

エルヴィス・コステロが『シー』として英語カバーして、映画『ノッティングヒルの恋人』の主題歌としてリバイバル・ヒット。原題の訳は「恋のあらゆる表情」で、会うたびに変わる恋人の態度に戸惑う男心を歌っています。他にもシャンソンの名曲『ラ・ボエーム』(La bohème, 1965年)などで知られる国民的歌手で、アニメ『機動戦士ガンダム』の主要キャラクター名の元ネタでもあります。

エルザ 『哀しみのアダージョ』

Elsa – T’en va pas 1986年

映画『悲しみのヴァイオリン』(La femme de ma vie)主題歌として、フランス国内で大ヒット。原題の訳は「行かないで」と、家を出てしまった父への切ない気持ちを娘目線で歌っています。日本では女性ジーンズ「サムシング」のCMで使用されました。また、原田知世が『彼と彼女のソネット』として日本語カバーしています。

ヴァネッサ・パラディ 『ビー・マイ・ベイビー』

Vanessa Paradis – Be My Baby 1992年 

人気ギタリストのレニー・クラヴィッツがプロデュースして、世界的にヒットしたロック調の軽快な曲。プレイボーイに振り回される女心を、フランス語訛りの英語でコケティッシュに歌っています。小悪魔的な美貌で俳優BB(ブリジット・バルドー)の再来と騒がれ、セルジュ・ゲンズブールが最後に愛したフレンチ・ロリータの一人です。

クレマンティーヌ 『ジェレミー』

Clémentine – Jérémie 1993年

英米の曲以外の情報がほぼ入ってこない90年代の日本で、珍しくヒットした曲。不思議な青年への恋心を歌っています。日本ではコーヒー飲料のCMで使用されました。小洒落たサウンド+透明感のある声が特徴で、90年代の日本で最も有名なフランス人歌手でした。本国よりも人気が出て、アニソンなどもカバーしています。

パトリシア・カース 『はかない愛だとしても』

Patricia Kaas – Il Me Dit Que Je Suis Belle 1993年

フランスをはじめ主にヨーロッパ圏でヒットした曲で、男は口先だけとわかっていながら甘い言葉に酔いしれてしまう女心を歌っています。ピアフの再来といわれた圧倒的な歌唱力は、悲しくも情熱的。フランス版のグラミー賞「ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジク(Victoires de la musique)」を受賞した『Mademoiselle chante le blues』も人気です。

カーラ・ブルーニ『ケルカン・マ・ディ~風のうわさ』

Carla Bruni – Quelqu’un m’a dit 2002年

「誰かが言ったの あなたがまだ私を愛してるって」と、終わったはずの恋に揺れる女心を歌っています。スーパーモデルからシンガー・ソングライターへ転身、しなやかで心地よいアコースティック・サウンドの同名デビュー・アルバムはフランス最大級の音楽賞「ヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュジック」を受賞。サルコジ元大統領夫人としても有名です。

参照サイト

朝倉ノニーの<歌物語>

シャンソニアネット

フレンチポップスの訳詞

Victoires de la musique フランス最大級の音楽賞ヴィクトワール・ド・ラ・ミュジク

Eurovision Song Contest 欧州歌合戦ユーロビジョン・ソング・コンテスト

関連プレイリスト

まだまだいい曲あります!もっと知りたい方やもっと聴きたい方はこちらでお楽しみ下さい。

フレンチポップ の有名曲

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